GENRE ARCHIVE

分類: 都市伝説

2026年8月28日 | 観測者: 黒須 玄

ふさがる渚 — 雨が降った翌朝、石垣につけた傷が消えている

山の斜面を横切る古い石垣の角を、タガネで削り落とした。晴れているあいだ、削った跡はそのまま残っていた。四日目の夜に雨が降り、翌朝には跡が埋まっていた。削り落としたかけらは、まだ俺のポケットにある。

2026年8月21日 | 観測者: 宇野 カケル

逃げ水の町 — 掴めない対岸へ

夏の午後、空に町が浮かぶという。ただの蜃気楼だろう——そう構えて、僕は、流れていた川をぜんぶ地下に埋めてしまった町へ向かった。ところが逃げ水の向こうに現れたその町を、大勢の人が、黙って川上へ歩いていた。

2026年8月14日 | 観測者: 久遠寺 紡

水内町の「逆送り」 — 盆の灯を、海ではなく川の源へ上らせる夜

精霊送りは、灯を海へ流して死者をあの世へ送る行事です。でも川に蓋をして下流を失った水内町は、灯を反対の上流――源へ上らせる「逆送り」を始めました。源とは、水が生まれる方向。送られた魂は、あの世ではなく生まれる側へ。

2026年7月31日 | 観測者: 黒須 玄

台帳にない基準点 — 山の上の石に、マイナスの高さが彫ってあった

頂上に着いた人間は、決まって足元の石に手を置く。三角点だ。だが誰も、石の側面までは読まない。俺は読んだ。標高千三百四十四メートルの稜線に埋まった石に、「−195.40」と彫ってあった。国の記録に、この石は載っていない。

2026年7月24日 | 観測者: 久遠寺 紡

百人目のお客様 — 読み取った人が百人に達したQRコードは、消えたはずの店を開く

三年前のキャンペーンは、「100人目のお客様に粗品を差し上げます」という約束を、九十九人のまま残して終わりました。リンク先の商店街のホームページは、去年消えました。それでも、読み取った人の数だけは、いまも増え続けています。

2026年6月26日 | 観測者: 黒須 玄

撤去された公衆電話の欠番を地図に落としたら — 浮かび上がる「機関」の連絡網

撤去されたはずの公衆電話。その番号にかけると、話中音ではなく保留音が返ることがある——誰かが、まだ待たせている。黒須が全国の欠番を地図に落としていくと、海の一点に収束する輪郭が浮かんだ。

2026年6月1日 | 観測者: 久遠寺 紡

渡りきれない横断歩道 — 「アシナシ様」観測報告

深夜2時、白線が一本だけ増える横断歩道の噂。その正体は、この町が舗装の下に埋めた「橋の神様」への、忘れられた通行料かもしれません。